BRAND VIEW | 恐怖の存在
Written by YUKI
/ CFO
September 12, 2020
皆さん、こんにちは。
昨日は2020年9月11日、あのニューヨーク同時多発テロから19年もの月日が流れました。
事件があったあの日、私はまだ小学生でした。当時「テロリズム」の意味はよく分かっていませんでしたが、父が当時購読していた新聞には見たこともない大きな文字や写真が並び、ビルに大きな飛行機が飛び込む瞬間が何度もテレビで報道され、何かとてつもなく恐ろしいことが起きたのだ、ということは幼いながらに理解していたように思います。
それから12年後、出張で立ち寄ったニューヨークで、初めて「グラウンド・ゼロ」と呼ばれている事件の跡地を訪れる機会がありました。その場所は既に観光名所の1つとしてすっかり綺麗に整備されているのですが、ポッカリと空いた大きな穴の周りに犠牲者の名前が刻まれたその場所の美しさと恐ろしさに、身震いをしたことを鮮明に覚えています。
さて、世界中の人々が平和への祈りを捧げた昨日でしたが、そんな中Twitter上である投稿が大きなバズを生んでいたのが目に入りました。
それは「あのニューヨーク同時多発テロは存在しなかった」という趣旨の投稿です。あの飛行機がビルに飛び込む映像は、何か他の大きな事件を隠すために合成で作られた映像だ、と言う訳です。
何を言っているんだ、と思う方が多いでしょうが、この投稿は驚くことに数千件もリツイートされ、多くの人々の共感の声を集めていました。「飛行機が本当にビルに飛び込んだのであればここに影が落ちてなければおかしい」「飛行機の両翼の幅を考えると、ビルとの縮尺が合わない」などといった具合です。
彼らの主張の是非はさておき、このような世間に広く周知された出来事に対して、背後に何者かの意図が隠されているのだと指摘する説を一般的に「陰謀論」と言います。
これは取り分け新しいものでもなんでもなく、古くはケネディ大統領の暗殺にはじまり、本当はアポロ11号は月に行っていない、アメリカは真珠湾攻撃を事前に察知していたが大戦に参戦したいがために政府が黙殺した、などなど、例を上げればキリがありません。
中でもかなり広く周知されているのは「地球温暖化は本当は存在しない」という説です。『ジュラシック・パーク』など数々の著作で知られる世界的なSF作家マイケル・クライトンの著した『恐怖の存在』というベストセラー小説では、実際に書かれた論文を詳細に引用して「地球温暖化というのは利権団体の作り出した虚構である」という説が展開され、幅広い読者の支持を集めました。これを受けて『不都合な真実』で一斉を風靡した元アメリカ大統領アル・ゴアがマイケル・クライトンを痛烈に批判するなど、当時の地球温暖化問題は一種の政治ショーの様相を呈しました。
映像や音声の合成技術も進み、これだけ様々な風説が飛び交う中、私たちは数々の「陰謀論」と「真実」をいかにして見分ければ良いのでしょうか。2つほど有用な方法をご紹介したいと思います。
ちなみに「頭が良い人に聞く」というのは、実はあまり有用な解決策にはなりません。そもそもこれだけの数の陰謀論が未だに幅を利かせているのは「科学者」「教授」「医者」など、その分野に精通している(はずの)エキスパートたちが加担している、というのも大きな一因だからです。たとえば信じられないことですが、未だに「大手製薬会社が民衆の抵抗力を弱めて病気を増やすためにワクチンの摂取を促している」という陰謀論に加担して書籍を売る医師は後を絶ちません。
まず有用な方法の1つは、自分にとって都合の良い情報を疑う、ということです。一見とんでもない言説が広がってしまう最大の要因は、私たちの誰もが(事実かどうかに関わらず)自分の信じたいものを信じやすい傾向にある、ということです。先の例でいえば、「ワクチンは大手製薬会社の陰謀だ」と信じる人にとって、「コロナウイルスのワクチンを通じて、政府は我々にマイクロチップを埋め込もうとしている」というのは非常に都合が良い説明です。元々持っている思想や利害関係に照らして都合が良い方の説を信じてしまっていないだろうか、と常に疑うことは有用な方法の1つです。
もう1つ「循環論法」を見破る、というのも非常に有用なスキルの1つです。例えば、「ワクチンが製薬会社の陰謀だ」と唱える有名な医師の本の帯に「有名なテレビ番組で私の説が支持されました」と書いてあったとします。これは「権威あるテレビ局が私の説を支持した、だから私の説は正しい」ということを伝えたい訳ですが、よく考えてみればそもそもテレビ局は元々その医師がそれを唱えたことを受けて、それを紹介したに過ぎません。つまりテレビ局にとっては「偉いお医者さんが言ってるから正しい」、医師にとっては「テレビが支持したから正しい」と、双方の論理の間で明らかな循環が生じています。こうした循環を繰り返すうちに「陰謀論」が肥大化していってしまうのは良くある現象です。その循環を見破ることができれば、「陰謀論」の罠に陥ってしまうリスクを大きく減らすことができます。
いまのように社会的ストレスが大きい状況は、あらぬ陰謀論が流布しやすい時期でもあります。
新型コロナウィルスの流行に加え、家篭りに伴うSNS滞在時間の増加、自民党の総裁選挙にアメリカ大統領選と、あらゆる陰謀論者にとって都合の良い条件は揃っています。
彼らの罠に陥ることがないように、くれぐれも気を付けて過ごしてきたいですね。
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