BRAND VIEW | 新時代の労働戦争

Written by YUKI

/ CFO

 

December 14, 2020

 

 

皆さん、こんにちは。

つい先日まで紅葉を楽しんでいたところだったのに、すでに一部の地域の天気予報では雪マークが点灯し始めました。

ついついクリスマスのショッピングにでも出かけたくなってしまいますが、今年は我慢でしょうか…。

来年には自由に出かけられるようになっていることを願うばかりです。

 

さて今回は、以前に書いた記事「新時代のホームエンタテインメント戦争」の続編ともいうべき記事です。

 

前回は、いま起こっているこの「ホームエンタテインメント戦争」が究極的には「コンテンツの獲得戦争」であることを解説し、その上でこの先の勝敗に関しても私見を述べました。

 

これに関連して、今月は大きな2つのニュースがありました。

 

ウォルト・ディズニー社は今後数年以内に10本もの新作スター・ウォーズ作品と、さらに10本の新作Marvel作品を自社のストリーミングサービスDisney+で独占することを発表

https://jp.techcrunch.com/2020/12/11/2020-12-10-disney-investor-day/

 

ワーナー・ブラザーズ社は、2021年に公開する全ての映画作品を自社のストリーミングサービスHBO Maxで同時配信することを発表

https://www.businessinsider.jp/post-225474

 

まさしく、2020年は各社が本腰を入れて自社ビジネスの「デジタル化」に大きく舵を切った記念すべき年になったと言えます。コンテンツ力に勝るディズニーが今年世界中でもっとも多くの顧客を獲得したVODサービスとなり、今のところ凡そ前回の予想通りに市場が動いていると思います。

 

しかしながら、このような動きが進んでいるのはエンタメ業界だけでは決してありません。

皆さんがお勤めの様々な業界でも似たような話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

前置きが大変長くなってしまいましたが、今回はこのような時勢の中で私たちの仕事、もとい「労働市場」がこれからどのように変わっていくのか、3つの私見を述べてみたいと思います。

 

これは決して特定の仕事の重要性や意義を軽んずるものではありませんが、一つの方向性としてご笑覧頂けますと幸いです。

 

 

1)中間業者の弱体化
まず私が考える第一の潮流は、「中間業者」の弱体化です。

これまで物理的に形を伴って存在したビジネスがデジタルに置き換わると、ロジスティクスのあらゆる局面で効率化が進むためです。

 

具体的なニュースをひとつ取り上げます。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ070KH0X01C20A2000000

 

広告代理店最大手の電通は、今期の大幅な赤字見通しと人員の削減を発表しました。

プレスリリースによるとその理由は「新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞で企業が広告費を縮小した」ことであるとあります。

 

これは本当でしょうか?

もう一つ、今度は海外のレポートを見てみましょう。

https://www.visualcapitalist.com/evolution-global-advertising-spend-1980-2020/

 

こちらは1980年~2020年までの世界の広告費の内訳を示したグラフです。

2020年、確かに新聞とテレビの広告費が大きく落ち込んでいることが見て取れる一方、SNSの広告は依然として右肩上がり、検索広告やオンライン動画などの広告も多少の鈍化があるものの、前年に比べて成長を続けていることが分かります。また、GoogleやFacebookなど、オンライン広告の大手グローバル企業はいずれも今年大幅な増収増益を発表し、株価を伸ばしています。

 

この2つの記事を読み解けば、今起きていることは「広告費の縮小」などではなく、「広告のデジタル化」が急速に進んだことによって広告主が媒体から直接広告を買い付けられるようになり、代理店が販売窓口を独占してきたオールド・メディアから収益を上げられなくなっている、というのが実態と考えるべきです。

 

つまり、2020年よりも広告宣伝費が回復する2021年においても、恐らく同じ傾向が続くと予想します。

 

もちろん同様の合理化は広告代理店だけではなく例えば証券取引の営業や保険の代理店業などでも既に発生していますが、今後幅広い業種における「中間業者」の弱体化は避けられないと考えます。

 

 

2)データサイエンティストの台頭と営業の合理化

これは1)とも関連しますが、デジタル化が進むということは、各事業者が取得できる顧客データの量が増えることを意味します。

 

例えば上記のエンタメの例でいえば、これまでコンテンツ企業は「映画館にどういう人たちが来ているのか」「映画館の中では何をしているのか」等といったデータは映画館からの又聞きでしか取得できなかった訳ですが、ストリーミングサービスに移行することによってそれらのデータが自社で直接取得できるようになります。

 

同じように「顧客がどの媒体で何秒間広告を視聴したのか」「その結果どれだけ売上が伸びたのか」といったデータも、広告代理店を介さないことによりオンライン媒体から容易に得ることができるようになります。

 

これによって必然的に重要性が高まるのが、各企業でデータを分析できる専門家の存在、即ちデータサイエンティストです。

 

分析的な仕事ならAIでもできるんじゃないの?と思う方もいらっしゃると思いますが、実際問題として「どのようにデータを分析して何を決定したいのか」というのは完全に経営問題ですので、組織内でその翻訳を担うことができるデータサイエンティストの存在は不可欠です。

 

また、企業のデータサイエンスを担える人材は未だ希少であるため、現実問題として「営業」と同じ報酬体系で彼らを雇用することは不可能です。

 

十分な数のデータサイエンティストを雇用するため、ここから数年はこれまで以上の速度で営業組織を合理化していく企業が増えることが予想されます。例えば証券会社の営業人員や医薬品業界のMRなど、特に営業人員がの給与が高い業界では既に大規模な合理化が進んでいます。

 

 

3)日本における解雇規制の緩和

近い将来、日本の厳格な解雇規制が緩和の方向に動くと思います。

なぜなら、上記のデジタル化と合理化に伴って発生する余剰人員を、各企業が支え切れなくなるからです。

 

国際的なビジネス競争にさらされている多くの企業にとって、海外で既に進んでいる合理化の波に逆らって雇用を守りながら戦い続けることは、片足を縛られているのに等しい状況です。

 

これは今年の前半にトヨタ社長が語った内容ですが、これからこのような趣旨の発言が経済界の至るところで囁かれるようになり、同時に経団連企業から政府への大規模なロビー活動が始まると予想します。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/051400346/

 

恐らくこれから日系企業でもデータサイエンティストやそれに類する求人が激増する一方、既存社員の「非正規化」「早期退職制度」などが多く報じられるようになり、やがて厳格な解雇規制の緩和に関する是非が議論され始める、という順序を踏むのではないでしょうか。

 

以上3つが、いま私が考えるこれからの「新時代の労働戦争」の方向性です。

少し暗い予想もあったかもしれませんが、前回の記事と同様、個人的には極めて現実的な線での予想であると考えています。

 

いまキャリアの方向性に悩まれている方の一助になれば幸いです。

 

それでは、皆さまクリスマス前に体調を崩されないよう、気を付けてお過ごしください!^^

 

 

 

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