BRAND DESIGN | D2Cブランドが世界で注目される理由

Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

October 27, 2020

 

 

建築家の山之内淡です。

今回は、以前書かせていただいた記事「BRAND DESIGN |「D2Cブランドって何?」と聞かれても答えられるようになる」の続編として、「D2Cブランドが世界で注目される理由」についてお話していきたいと思います。




まずは、“D2Cブランド” について、簡単に復習しておきましょう。

“D2Cブランド” とは、『ブランディング × デジタル』という特徴をもった “D2C” という新しい業態のブランドのことであり、

「ブランディング = 定性的な価値を生み出すこと」で、「デジタル = 定量的な価値を生み出すこと」でした。



“D2Cブランド” のイメージやニュアンスを掴む上では、上記のように概念的に覚えていただければ何の問題もありません。

しかしながら、「それじゃあ、なぜ “D2Cブランド” は世界的に注目されているの?」という疑問にまで答えるには不十分で、もう少し学ぶ必要があります。

 

結論から先に書かせていただくと、「“D2Cブランド” が注目される理由」を理解するために必要なキーワードがまだ2つ足りていないのです。

足りない2つのキーワードは、「ミレニアル世代」と「エクイティ・ファイナンス」になります。

 

どちらもビジネス分野の言葉ですので、馴染みがない方もいらっしゃるかと思います。

ただ、一度理解してしまうと、とても簡単な内容ですので、ひとまずサラッと目を通してみてください。




それでは、キーワードの1つ目、「ミレニアル世代」についてです。

これは “D2Cブランド” の辞書的な意味を把握する方が早いと思いますので、以下に引用します。

 

“新しい消費の価値観を持つミレニアル世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド

 

「?」が頭に浮かんだ方、ご心配なく。上の定義を読んで「その通りだよね」と思える方は、そもそもこの記事を読む必要はないですので、気にせず学んでいきましょう!

この定義が何を伝えているのかというと、“D2Cブランド” のコアターゲットが「ミレニアル世代」であるということです。

「なぜ、ミレニアル世代がコアターゲットなのか?」という部分は、「経済面においても社会面においても、これから世界のどこの国でも主役になるボリュームゾーンだから」という程度の理由しかありませんので、深く考えず「ミレニアル世代に向けたブランドがD2Cブランドなんだな…」くらいに覚えていただければ十分です。

 

ここで注意が必要なのは、必ずしも「コアターゲット = コア顧客」ではない、ということです。

「?」と思われるかもしれませんが、これは比較的よくあることです。

 

例えば、Appleのコアターゲットは「クリエイティブな人々」だと思いますが、実際にコア顧客となっているのは、クリエイティブな人々に憧れを抱くビジネスパーソンや学生ですよね。

例えば、メルカリのコアターゲットはスマホが日常の一部になっている「ミレニアル世代やZ世代」だと思いますが、実際にコア顧客となったのは、もっと上の世代の方々でしょうし、最近はシルバー世代が大きく伸びていると聞きます。

 

つまり、「コアターゲット = ブランドの世界観をデザインするためのペルソナ(ペルソナ = モデルとなる人物像)」であって、実際のコア顧客とは重ならない場合も多々ある、ということです。

“D2Cブランド” の「コアターゲットがミレニアル世代」だからといって、「実際にミレニアル世代が多く購買しているのか?」というと、そうではない可能性も高い、ということは必ず覚えておいてください。



さて、「コアターゲット = ブランドの世界観をデザインするためのペルソナ」と説明させていただきましたが、“D2Cブランド” は、まさにこの定義にそのまま当てはまります。

“D2Cブランド” の世界観をデザインする上で、ペルソナになるのが「ミレニアル世代」です。

 

もう少し具体的に書きますと…「SNS等での双方向コミュニケーションを大切にすること」が大きな特徴といえます。

テレビ広告などの不特定多数のマスに向けた一方通行のプロモーションではなく、SNS等での双方向なコミュニケーションを主にして展開していくのが特徴です。

 

もうひとつ、社会倫理的であること(Ethicalなこと)も、非常に大きな特徴になります。

Mr. & Ms. Cat も、Sustainability(持続可能性)やSDG’sを、ブランドの核のひとつにしていますが、これはAWAYやallbirdsなども含めた “D2Cブランド” に共通する大きな特徴です。

“D2Cブランド” を表現する言葉に、“Ethical Brand(社会倫理を重要視するブランド)” という言葉があるくらい、「社会倫理的にどのような姿勢を持っているのか?」について意識的なブランドが、“D2Cブランド” といえます。

 

まとめますと。

1つ目のキーワードの「ミレニアル世代」は、「マスメディアによるプロモーションよりも、SNS等による双方向コミュニケーションを重要視する」こと、そして「社会倫理的(Ethical)な意思表明や価値観を重要視する」こと、の2点を表しています。




次は、2つ目のキーワードである「エクイティ・ファイナンス」についてですが…こちらはとてもシンプルですので、すぐに終わります。

 

「〜ドルを調達」というようなニュースを目にすることがあるかと思いますが、それをそのまま「エクイティ・ファイナンス」と呼びます。

自社の株を投資家に譲渡し、評価額分の資金を得る、というものになります。

 

この「エクイティ・ファイナンス」は、金融機関からの融資(デッド・ファイナンスと呼びます)ではなく、投資家から株と引き換えに資金を得るものですので、

当然ながら、投資家が未来への可能性を評価しなければ成立しません。

そのため「エクイティ・ファイナンス」ができるのは、「テクノロジー企業」にほぼ限られています。

テクノロジーの力によって、これまでにない価値を生み出し、爆発的に成長する可能性がある、という点が評価に繋がるためです。

 

“D2Cブランド” の強みのひとつが、「デジタル」ですので、投資家が未来への可能性を感じて積極的に投資が行われるテクノロジー分野にあたり、

「エクイティ・ファイナンス」を武器として使用することができます。

 

「エクイティ・ファイナンス」が可能になるということは、過去の実績ではなく、未来への可能性を基に資金調達が可能になるということですので、事業の成長速度のポテンシャルが飛躍的に高まります。

Mr. & Ms. Cat については、まだエクイティ・ファイナンスの予定はありませんが、世界に出ていくタイミングでは有効な手段になるであろうと考えています。

 


整理しますと、

“D2Cブランド” は、「SNS等での双方向コミュニケーション」と「Ehicalであること」を重要視する新たな世界観と思想を持ったブランドであり、

財務面では、テクノロジー企業として「エクイティ・ファイナンス」を武器にできるという特徴があります。

 

この2つの特徴のために、“D2Cブランド” は、世界的に注目されているといえます。

2つの特徴の掛け算であることで、他の分野にない希少性が生まれますので、どちらか一方ではなく、「2つの強い要素が掛け算されている」点が、非常に大切なポイントです。

まさに『D2Cブランド = ブランディング × デジタル』とご説明した内容ですね。



最後に。

AppleやTeslaも、「中間業者を挟まずに顧客に “直接” 商品を売る」という意味では、“Direct to Consumer” ではあると思うのですが…

詳しい方はご存知のように、Appleのブランディングは歴史的な名作CMやSteve Jobsの伝説的なスピーチなど、「双方向コミュニケーションではなく、一方向のコミュニケーション」によって形成されたもので、SNS等による双方向コミュニケーションがメインとはいえないですよね。これは、Teslaについても同様のことがいえると思います。

そのため、AppleやTeslaについては、“D2Cブランド” と呼ぶよりも、国際的な影響力を持つイノベーティブな企業等と呼んだ方が実情に合っていると思いますので、ここでの “D2Cブランド” の定義には入れずにお話しました。



今回は、ビジネス寄りで情報量多めの内容だったと思いますので、次回はデザイン・アートの分野に戻ります。

“藤本壮介(Sou Fujimoto)” という、自分の師匠でもあり、現在世界で最も注目されている建築家について、ご紹介できればと思います。

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





次の記事を読む ⇨

BRAND VIEW | アンチ・ヒーローはやってきた

BRAND DESIGN | D2Cブランドが世界で注目される理由