BRAND VIEW | ナイキの広告が抉るもの

Written by YUKI

/ CFO

 

December 5, 2020

 

 

皆さんこんにちは。

明日からアニメ『進撃の巨人』最終シーズンの放送が開始されるということで、移動時間の隙間を見つけて前のシーズンを見返している今日この頃です。

 

最初は人類vs巨人だったドラマがいつの間にか人類vs人類へと転換し、個人vs人類へと移り変わっていく展開はなかなか秀逸だなぁと、感心してしまいます。『ゲーム・オブ・スローンズ』のようなハリウッドドラマとしてリメイクしてもらえたら、ぜひ見てみたいですね。

東宝の実写は無かったことにして...。 笑

 

さて、そんな『進撃の巨人』では、巨人の力を持つ ”悪魔の一族” エルディア人が民族的に迫害されてきた歴史が、この物語の大きなドライバーになっています。

 

外国人住民率がわずか2%しかない日本ではオープンに議論されることが比較的少ない「人種差別」というテーマですが、今週はつい先日話題になったこちらのナイキの広告を基に、少し考えてみたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=G02u6sN_sRc&feature=emb_logo

 

既に大きなニュースになっているのでご存知の方も多いと思いますが、こちらは今週NIKE JAPANがリリースした新しい広告です。

日本の学校に通う3人の女子高生が抱える「生きづらさ」を表現したこの広告は大きな賛否両論を呼び、真正面から差別の問題を描いたこの作品を絶賛する人もいる一方、YouTubeのコメント欄をご覧になっていただければ分かるように、これが日本を中傷するものだとして大きく反発する人、米国企業であるナイキが他国の差別問題を取り上げることそのものに嫌悪感を示す人など、反応は様々です。

 

さて、この広告の表現やナイキという企業への議論はさておき、この広告が私たちに問いかけていることの1つは明らかです。

 

「あなたの身の回りに、差別はありますか」

 

この問いに私たちは何と答えるでしょうか。

 

インターネットで「差別」と検索すれば、各省庁や地方自治体が過去に行った様々な「差別」に対する調査結果を見ることができます。調査のテーマは時に「男女」であったり、「性的マイノリティ」であったり、「人種」であったり、「障がい者」であったりしますが、いずれの調査も私たちの「差別」への意識を問いかけるものです。

これらの調査結果を見てみると、いずれの調査でも回答者の大きい割合、ときに半数以上の人が「身の回りに差別はない」「わからない」、或いは「どちらともいえない」と回答していることが分かります。

 

この数字に対して、私たちは何を思うでしょうか。

 

では今度は質問を変えます。少し考えてみてください。

 

「あなたはこれまでの人生で、何人のLGBT*の人と出会ったことがありますか」 

(*LGBTはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字です)

 

どうでしょう。

 

恐らくですが、殆どの方が「学校や職場などの実社会で、LGBTの人と知り合ったことはない」のではないでしょうか。

 

しかし残念ながら、それは大きな誤りです。

調査によって数値は異なりますが、日本の人口の凡そ3~10%は性的マイノリティに属すると考えられています。少なく見積もっても100人中3人、学校でいえば、各クラスに1人はLGBTに属する人がいることになります。

つまり、今までクラスメートや同僚の中に1人もLGBTの人がいなかった、というのは統計的に殆どあり得ません。

 

にも拘らず多くの人々が彼ら・彼女らと「出会ったことがない」と考えてしまうのは、彼ら・彼女らが単にそれをオープンにしていなかったからなのです。

 

私には、大学時代にシェアハウスをして一緒に暮らしていたゲイの親友がいます。

彼とはずっと親しい友人でしたが、出会ってから長い間、本当に「親友」と呼べるようになるまで、私にそのことを話してはくれませんでした。

「ゲイであることを打ち明けて、受け入れられるかどうか分からなかった」そうです。

 

果たして社会は、これまで彼を差別してこなかったでしょうか。

私はそこに加担していなかったと、胸を張って言えるでしょうか。答えはNOでした。

 

彼が「打ち明けるのが怖い」と感じてしまった「何か」、それこそが差別なのだと思い知ったのはこの出来事がきっかけだったように思います。

 

さて、ナイキの広告に話を戻します。

この広告で描かれているのはあからさまな暴力や虐めを受けている人たちではなく、何となく「皆と同じでなければいけない」という無言の圧力に、生きづらさを抱えている3人の学生です。

 

皆と同じになりたいのではなく、「ありのままで輝きたい」と願う若者たちです。

 

私たちがいま彼女たちにかけるべき言葉は、この広告をみて家族で話し合うべきことは、本当に「この広告が日本を中傷しているか否か」でしょうか。

「アメリカもアジア人を差別しているじゃないか」と、声を荒げることでしょうか。

 

様々な記事やネットの声に惑わされず、一歩立ち止まって、ぜひ改めて考えてみて欲しいと思います。

 

少しずつ、一歩ずつ、誰もが暮らしやすい世界を目指して、前進していきたいものですね。

 

それでは!

 

 

 

 

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