BRAND DESIGN | Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” ー オンライン・オフライン両方向から「環境」をデザインする
Written by TAN
/ Architect, Creative Director, CEO
December 5, 2020
建築家の山之内淡です。
今回は、先日グランドオープンした Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” について、デザインのこだわりや細かな工夫についてお話していこうと思います。
オンライン・オフライン両方向から「環境」をデザインする
Mr. & Ms. Cat の “THE SHOP” を通して自分が達成したいことは、オンライン・オフライン両方向から「環境」をデザインし、ユーザーのみなさんに提供することです。
ユーザーにとって、お買いものをするECサイトは、オンラインの「店舗」ですよね。
ECの黎明期は、「配送料がいかに安いか」や「いかに早く届くか」にユーザーの関心が集まっていたと思います。
しかし、ECも成熟期に入り、自分も含め、ユーザーの関心が徐々に「体験としての満足感」や「環境への配慮などの倫理的な共感」に変わってきていると感じています。
これは、実際の「店舗」についても同じことがいえます。
リアル店舗の方が、オンラインのECのお店よりも、変化は5年ほど早かったと思います。
リアル店舗では、2010年頃から、全世界的に業種を問わずお店のデザインが大きく変わりました。
効率的に多くの商品を陳列する店舗スタイルから、徐々に体験の気持ち良さや自分たちの取り組み全体に対する共感を全面に押し出すデザインに様変わりしました。
そのようなリアル店舗の劇的な変化を牽引したのが、何度かご紹介している、現在は世界的なユニコーンD2Cブランドになっている AWAY や allbirds や everlane です。
* allbirds / shop
* everlane / shop
自分にとって、このリアル店舗の変化は非常に好感のもてるものでした。
そして、オンラインのECのお店に対しても、ユーザーは同じ方向性の変化を求めるであろうことも容易に想像がつきました。
そのようなECのお店は、何よりも自分がほしいと思えるもので、且つ時代が求めるものであろうとも思っていました。
自分はECを生活に取り入れるのが比較的早かったので、2010年前には、洋服と家具以外はほぼすべての製品をECで購入していました。
しかし、そのような生活になってみると…どんどん自宅に届く無味乾燥な段ボール箱の山、扱いにくく資源の無駄に思えるビニールの緩衝資材の山、効率化と価格競争を追い求めたECサイトの数々…
ECはたしかに便利で生活を変えてくれたのですが、ECを使えば使うほど心が乾いていくような…少し悲しい原体験として思い出に残ってしまっています。
Mr. & Ms. Cat の “THE SHOP” では、そんな自分のECに対しての原体験を前向きに活かし、当時の自分に「ほら、こんなECサイトもあるんだよ」とプレゼントするような気持ちでデザインをしています。
もちろん、合理性や利便性を犠牲にしているわけではなく、配送料なども必要最低限に抑えていますし、まとめ買いするとよりお得な設計にしています。
大手のECサイトでは手に入らないものも取り扱っていますので、例えば、レア物1点と気になるアイテム数点といった、何点かまとめてお買い上げいただくことで、お財布にも優しい設定になっています。
また同時に、オンラインのECのお店も、リアル店舗のお店と同様、webサイト(お店の内部)の工夫のみでは、満足感や共感の観点からは完結しないと思っています。
実際に、「どのようなかたちで手元に届くのか?」といった部分は、
ご自身で購入される場合はもちろん、プレゼントに利用される場合には、特に気になるポイントですよね。
環境に配慮しながらも、デザイン性の高い梱包資材を使用
Mr. & Ms. Cat の “THE SHOP” では、シンプルで無駄のないデザインの段ボール箱で商品を発送します。
この段ボール箱は、再生紙を使用していますので、環境にも優しいです。
* Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” / 配送用段ボール箱
段ボール箱は、配送の途中でこすれたり、シワが入ってしまうこともありますよね。
スティーブ・ジョブズは、「スチールはこすれても、傷が入っても、美しい」という理由で、初代の iPhone にスチールを採用したといいます。
Mr. & Ms. Cat の “THE SHOP” では、同じ理由で、余白を多めにとったホワイト地にワンポイントのロゴという、シンプルなデザインとしています。
配送の途中で段ボール箱がこすれてしまったり、シワが入ってしまっても、汚れではなく、それが味に感じられるように、という工夫です。
また、段ボール箱の内部の資材には、同じく再生紙を使用した、落ち着いた色味のサーモンピンクの緩衝資材を採用しています。
この色味は、ブランドカラーのひとつでもある、「猫の舌の色(=サーモンピンク)」をベースに吟味をして採用を決めました。
* Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” / 配送用緩衝資材
商品保護のため、プチプチのクッションシートも一部活用しますが、必要最低限に留め、この再生紙を使用した「猫の舌の色」に似た緩衝材を主に使用して配送します。
シンプルで無駄がなく、清潔感と高級感が同居するサイトデザイン
商品のセレクトについても、簡単に触れさせていただきますね。
Mr. & Ms. Cat の “THE SHOP” で取り扱わせていただく商品は、どれも素晴らしいプロダクトばかりです。
HASAMIのフードボウルなど、とても有名な愛猫プロダクトもあれば(うちの愛猫たちも、HASAMIのフードボウルは大のお気に入りです…!)、
リサ・ラーソンの作品や台湾発のステーショナリーブランドのかわいく格好良い万年筆なども取り扱っています。
※個人的には、万年筆がものすごく気に入っていて、見つけたときは歓喜しました…。
* Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” / HASAMI 16cm FOOD BOWL
* Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” / Lisa Larson レディ・ウィズ・キャット
* Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” / TOOLS to LIVEBY ファウンテンペン
1点1点が素晴らしいプロダクトなため、平均的なお値段は少し高めかなと思います。
そのため、即決してどんどん購入される方よりも、ゆっくり吟味してまとめ買いをされる方が多いのでは?と、ブランド立ち上げ当初から想像していました。
ですので、サイトデザインは、ゆっくり商品記事を読みながら吟味できるよう、シンプルで無駄がないデザインとしました。
同時に、セレクトプロダクトの趣向に合わせ、清潔感と高級感を同居させるようなトーン&マナーとしています。
Shopify を大改造したグローバルECシステム
最後に(あまり興味のない方も多いかもしれませんが…)、Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” のECシステム面のお話をして記事を締めたいと思います。
Mr. & Ms. Cat では、“Shopify(ショピファイ)” という、カナダ発の世界的に急成長しているECプラットフォームを採用しています。
今後、Mr. & Ms. Cat が国際的に展開していったとしても、商品の管理体制が悪化したり、通信速度が落ちたり等のエラーが出ないよう、はじめからグローバルプラットフォーム上で展開をしています。
そして、この Shopify は、デザインのテンプレートを提供してくれる仕組みなのですが…
Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” では、Shopify のテンプレートをプログラミングを駆使して大改造しており、テクノロジーとしても先端的なチャレンジをしています。
とてもシンプルなデザインのサイトですが…逆にプログミングとしては非常に難易度が高い仕様になっています。
その意味で、見た目はシンプルではあるけれども、他社が真似できないユニークさをもっているのが、Mr. & Ms. Cat “THE SHOP” です。
様々な観点から書かせていただきましたが、ユーザーのみなさんに気に入っていただけるお店になったら、これ以上うれしいことはありません。
どのプロダクトを購入されても後悔しないと思いますので、ゆっくりお買い物を楽しんでください!
今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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