BRAND DESIGN | 建築家 藤本壮介(前篇)

Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

November 1, 2020

 

 

建築家の山之内淡です。

今回から前・後篇に分けて、現在世界で最も注目されている建築家であり、自分の師匠でもある、“藤本壮介(Sou Fujimoto)” についてご紹介したいと思います。

 

今回の前篇では、発表されたばかりの新作の紹介を中心に、藤本壮介(以下、藤本さん)という建築家の根本についてお話していきます。

藤本さんは、現在は主にパリを拠点としつつ、世界中を日々飛び回っています。




まずは、ここ数年で発表された新しい建築作品から、3作品ほどご紹介したいと思います。

 

1作品目は、数ヶ月前にフランスで竣工したばかりの集合住宅です。

日本でいうところの、分譲マンションにあたります。



* L’Arbre Blanc Residential Tower, Sou Fujimoto, 2020

* https://www.archdaily.com/918762/larbre-blanc-residential-tower-sou-fujimoto-architects-plus-nicolas-laisne-plus-oxo-architects-plus-dimitri-roussel?ad_medium=gallery

 

まるで巨大な1つの樹木のような建築ですよね。大きく張り出した各住戸のテラスが、これまでにない新しい風景を創っています。




2作品目は、ハンガリーのブダペストにて、現在建設工事中の音楽ホールです。



*House of Hungarian Music in Budapest, Sou Fujimoto, 2020 -

* https://www.archdaily.com/580852/sou-fujimoto-chosen-to-design-budapest-s-house-of-hungarian-music

 

この建築は、デザイン当初「Forest of Music(音楽の森)」と名付けられていました。その名の通り、森に覆いかぶさるキノコのような…樹木と絡み合った姿が非常に印象的で、一度見ると忘れられない強さがあります。




そして3作品目は、フランスのパリにて、そろそろ着工するかと思われる複合施設です。



* Village Vertical, Sou Fujimoto, 2020 -

https://www.archdaily.com/892748/sou-fujimoto-nicolas-laisne-and-dimitri-roussel-to-build-28000-sqm-village-vertical-in-grand-paris

 

山脈のような圧倒的なスケール感と、日本人らしいデザインの繊細さが同居する、これまでにあったようでいて見たことのない、そんな新しさをもった美しい建築ですね。




新作の中から、3作品ほど紹介させていただきましたが、みなさんはこれらの作品から、どのような印象を受けたでしょうか?

 

誰からもひと目見てわかるのが、「自然を感じること」かと思います。

巨大な1本の樹をモチーフにしてみたり、森と同化するようなデザインをしたり、樹木を積み木のように積み重ねたり、設計の手段はそれぞれの作品毎に異なってはいても、どこか自然の風景を感じさせるような印象は共通していますよね。

 

「人工物には違いないのに、どこか自然物を想起させる」

それこそが、藤本壮介という建築家の作品が、世界中で求められる最も大きな理由だと、自分は思っています。




もう少し、踏み込んでお話します。

 

建築家はもちろん、映画や音楽や現代アート等も含めて、あらゆる作品は、作品だけが切り離されて評価されるのではなく、作家自身のアイデンティティも含めて評価されます。

 

藤本さんの場合、「日本人建築家であること」を前提に評価を受けるということです。

「この作品は、なぜ日本人が創らねばならなかったのか」「日本人だからこその表現が、この作品にはあるのか」といったことを、評価する人たちは注意深く見ているのです。

 

藤本さんは、自分と同じ北海道出身ということもありますし、どこか雄大でおおらかな自然を想起させる作品が多い印象があります。

そして、その「おおらかで豊かな自然のイメージ」は、「海外から日本をみたときのイメージ」と一致するものであり、納得感があるのではないかと自分は考えています。

だからこそ、藤本さんの生み出す建築には、強い説得力が宿るのではないか…と。




イチロー選手が、その俊敏でクレバーなプレイスタイルから「忍者」と呼ばれていたように、アーティストによる作品だけでなく、すべての表現というものは、必ずその表現者自身のアイデンティティを前提にして評価されるものです。

 

自分が藤本さんから学ばせてもらったことは、多すぎて、大きすぎて、なかなか言葉にするのも難しいのですが…

上記のような「表現者(自分)自身のアイデンティティを、どのように作品に昇華させるべきなのか」という自分自身との向き合い方は、本当に心から勉強になった部分であると感じています。




続く後篇では、藤本さんが、まだ自分と同じ30代であった頃に発表した、初期の小さな住宅作品を中心にご紹介しつつ、

自分のエピソードも絡めて、藤本さんの本質的な魅力について、お話できたらと思っています。

 

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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