BRAND DESIGN | THE HOUSE ー 建築家が描く、猫との “住” の未来(前篇)
Written by TAN
/ Architect, Creative Director, CEO
August 17, 2020
はじめまして。Mr. & Ms. Cat のブランド創業者で、建築家の山之内淡です。
Mr. & Ms. Cat のブランドの土台となる、『 THE HOUSE 』について、建築家の視点から語ってみたいと思います。
建築やデザインが専門でない方にも楽しんで読んでいただけたら…と思うので、なるべくわかりやすい言葉で書きたいと考えています。
それでは早速、はじめます!
『 THE HOUSE 』の1棟目は、『 Cat Landscape House(日本語にすると「猫の地形の家」)』と名付けられた、東京都内に建築予定の、戸建住宅です。
* https://mrandmscat.com/#thehouse
* 戸建タイプのモデルハウス。集合住宅タイプは別途計画中。
現代のあらゆる建築は、人の身体を基にした「 Human Scale(人体寸法)」によってデザインされています。建築を設計することは、設計図を描くことですので、ひと言で表現すると、「 建築は、寸法によって支配されている 」といえます。
『 Cat Landscape House(キャット・ランドスケープ・ハウス)』において、私たちが試みようとしている大きなチャレンジは、猫の身体に合わせた「 Cat Scale(猫寸法)」を考案し、「 Human Scale(人体寸法)」と混ぜ合わせ、猫と人が等しく心地いい住宅のかたちを生み出すこと。
人の大きさの空間と、猫の大きさの空間が混ざり合った、新たな住まいのかたちを創りたいのです。
アイディアのきっかけは、一本の短編アニメーション映画でした。
宮崎駿監督作品の『 毛虫のボロ 』です。
* http://www.ghibli-museum.jp/cinema/works/#kemusshinoboro
* 三鷹の森ジブリ美術館でのみ鑑賞できる短編作品。
『 毛虫のボロ 』が、三鷹の森ジブリ美術館で公開されて、すぐに観に行きました。上映が行われた土星座の中は、子どもたちのワクワクに満ちた素敵な時間であり、空間であったことをはっきりと覚えています。
『 毛虫のボロ 』のストーリーは、とてもシンプルで、“毛虫のスケールで世界を見ると、世界はこんなにも違って見える” です。
陽の光によって蒸発する水分ですら、異様で、可愛らしく、美しく、映画を観終えたあとは、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
そこで、ふと思いました。
「 猫からは、この世界がどのように見えているのだろう? 」と。
自分は、幼い頃から愛猫と暮らしてきましたし、今も夫婦で二匹の愛猫と暮らしています。
彼ら彼女らが、どのように世界を見ているのか、どのような家に住みたいものなのか、真剣に考えるようになりました。
考えれば考えるほど、現在のペット共生住宅は、“猫を飼う”人のための家であり、猫にとってはなかなかワクワクするような住空間体験ではないように思えてきました。
例えば、我が家の愛猫であれば、とにかく “階段” が好きです。
目にも留まらぬスピードで上り下りし、二匹それぞれが、好みの温度の空気が溜まっている高さを選んで眠ります。
ときには、半身を階段に隠して私たちをジッと見つめ、またときには、高いところから私たち夫婦を見下ろして満足そうにしています。本当に愛くるしい姿です。
私たち自身も、階段のある家が好きで、メゾネットタイプの住宅ばかりを選んで住んできました。愛猫たちも楽しんでくれているようには見えます。
しかし当然ながら、階段の寸法だけとっても、人のための階段の寸法でしかないのは事実です。
もっとこうしたら、このコたちはもっと楽しいだろうになあ…という思いが、どんどん募っていきました。
そんな毎日のなかで、愛猫たちの好みを見つけるたびに、ひとつずつ、建築のアイディアが広がっていきました。
また同時に、前述したように、建築の歴史は、「 Human Scale(人体寸法)」の歴史です。
建築家として、「 Cat Scale(猫寸法)」を考案し、「 Cat Scale(猫寸法)」を採用した建築を生み出すことは、歴史的な観点においても、価値あるチャレンジであると考えるようになりました。
『 THE HOUSE 』の1棟目である、『 Cat Landscape House(キャット・ランドスケープ・ハウス)』は、宮崎駿監督の短編アニメーション映画をきっかけに、自身の愛猫との生活体験の積み重ねから発想し、デザインした “猫と人が等しく心地いい” を実現する家です。
続く(後篇)では、より大きな「 地球 」や「 環境 」といった視点から、話を掘り下げてみたいと思います。
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