BRAND DESIGN | THE HOUSE ー 建築家が描く、猫との “住” の未来(後篇)

 Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

August 23, 2020

 

 

建築家の山之内淡です。


私たちの『 THE LETTER 』に目を通していただき、本当にありがとうございます。
Mr. & Ms. Cat をローンチしてから、早いもので2週間が経ちました。
みなさまの温かい応援に、毎日励まされています。


続く(後篇)では、「 地球 」「 環境 」といった、より大きな視点から、” 猫と人が、等しく心地いい “ の実現を目指す『 THE HOUSE 』について、お話してみたいと思います。
今回も引き続き、建築やデザインが専門でない方にも楽しんで読んでいただけたら…と思いますので、なるべくわかりやすい言葉で書いていきたいです。


早速ですが、みなさんは、“ ガイア仮説 ”(もしくはガイア理論) という概念をご存知でしょうか?

“ ガイア仮説 ” とは、「 地球全体が、1つの生命体として機能している 」という理論で、
英国の最も著名な科学者の一人であり、思想家であり、エンジニアでもある、James Lovelock(ジェームズ・ラヴロック)氏によって提唱されました。
James Lovelock氏の最新著書である『 NOVACENE / ノヴァセン 』でも ” ガイア仮説 “ についてわかりやすく説明されています。
自分の人生で読んだすべての本のなかで、ベスト10冊には入れたい、素晴らしい名著だと思います。

 

 

 

* James Lovelock 著,  藤原朝子 監訳,  松島倫明  訳

* https://amzn.to/34nNUJR



この著作が日本で出版された時点で、James Lovelock氏は、何と御年100歳…。

今なお聡明で、切り口は瑞々しく、高潔な科学者。心から尊敬の念を覚えます。

自分も70年後、こうありたいものだなあ…と思います。



さて、” ガイア仮説 ” =「 地球全体が、1つの生命体として機能している 」とする理論、と書かせていただきましたが、もう少し噛み砕いてみます。

 

例えば、私たち人間も、皮膚・血液・骨格・臓器・神経といった様々な要素の集合体ですが、身体全体として捉えると、ひとりひとりの人間が、1つの生命体として機能していますよね。

“ ガイア仮説 ” は、それと同じ内容を、「 地球 」という1つの惑星の規模に当てはめても成立するであろう、とする理論です。

 

Mr. & Ms. Cat もそうですが、ここ数年で、「 環境 」を重要なテーマのひとつに掲げるブランドが、世界各地で誕生してきています。

そして、” Sustainability(持続可能性)” や ” SDGs ” という言葉もよく目にするようになりました。

“ ガイア仮説 ” は、そういった大きな潮流の原点であると同時に、先端理論ともいえるのではないかと思います。



一方で、自分は建築家としての大きなテーマとして、日本に古来から伝わる「 人間だけでなく、動物・植物・人工物、すべてに魂が宿る 」という考え方、“ アニミズム ” と総称される思想を、建築のかたちで具現化できないだろうか、と日々考えています。

 

* アニミズム = Animism は、アニメーション = Animation(絵に魂を宿す)という言葉で、より一般的に、現代の日本文化に根付いていると思います。

 

 

そんな自分の中にあったテーマと、上記の “ ガイア仮説 ” は、語り方の違いはあれど、人間を含めた多様な存在が互いに作用し合い、バランスを保つことで、より大きな「 地球 」や「 環境 」の持続可能性を確保しているという意味で、同じ方向を向いていると感動し、共感をしています。



『 THE HOUSE 』は、(前篇)でお話した、猫の身体に合わせた「 Cat Scale(猫寸法) 」の考案や、愛猫との生活におけるディテールのデザインといった、ミクロな視点だけでなく、

” ガイア仮説 ” や “ アニミズム ” といった、「 地球 」や「 環境 」レベルのより大きなマクロな視点から、「 猫と人と建築の持続可能な関係性を提案したい 」と考え進めているプロジェクトです。

 

 

 

最後に、" 未来に繋がるデザイン思想 " という観点から、これまでお話した内容を整理して、締めたいと思います。

 

私たちが、普段の生活で目にしている、鉄やコンクリートやガラスでできた直線の多い建築が建ち並ぶ都市の風景は、

実は「 モダニズム 」というデザイン思想が、ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエなどの建築家によって生み出された後、世界中に広まり根付いた結果です。

 

たった1つのデザイン思想から、世界中の都市の風景が変わっていく事実を、建築や都市の歴史は、私たちに教えてくれているのです。

 

 

 

* Seagram Building, New York, 1958

* ミース・ファン・デル・ローエの代表作品のひとつ。アメリカ合衆国国家歴史登録財に指定。

https://www.archdaily.com/59412/ad-classics-seagram-building-mies-van-der-rohe

 

 

「 モダニズム 」という1つのデザイン思想を基にして、現在の私たちが暮らす都市の風景はデザインされています。

同様に、「 ユビキタス 」という1つのデザイン思想を基にして、iPhoneが誕生し、私たちの日常は大きく様変わりしました。

 

そして、次の22世紀の世界に向けて、現代の私たちが提示すべきデザイン思想は、「 地球 」や「 環境 」をテーマに掲げるコンセプトであることに、疑いの余地はありません。

大きな変化の兆しを感じていますし、世界中が変化に対するきっかけを探しているようにも思えます。

 

Mr. & Ms. Cat の創る『 THE HOUSE 』も、そんなきっかけのひとつになれたら…と願っています。

 

 

 

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