BRAND VIEW | 「喜び」のお値段

Written by YUKI

/ CFO

 

November 15, 2020

 

 

皆さんこんにちは。

2020年も11月中旬に差し掛かり、街は既にクリスマスの装いですね。

毎年クリスマスに近所のケーキ屋さんで買う小さなホールケーキを楽しみにしていたのですが、今年は娘のためにキャラクターのケーキをオーダーしようか、なんて考えています。

ケーキ代も馬鹿にならない今日この頃ですが、娘の笑顔はいつでもプライスレスです。

 

さて、そんなわけで今回はモノのお値段について少し書いてみたいと思います。

 

こちらはたまたま見つけた一昨日のニュースですが、韓国の人気アイドルグループBTSが出演する年末のコンサートについて、彼らの出演時間が分からないことや、約27,500円という高額のチケット価格に納得が行かないファンたちがボイコットを表明しているそうです。

https://sportsseoulweb.jp/star_topic/id=20357

 

またこちらは別のニュースですが、今週発売された人気ブランドのジル・サンダーとユニクロのコラボ商品があまりの人気ぶりにあちこちで売り切れ、早くも高額での転売がなされるなど混乱が起きているそうです。

https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12189-20162449605/

 

さて、上記の例はどちらも商品の「販売価格」を巡って起きている混乱の実によくある好例です。

では、これらのニュースによって、コンサートのチケットもユニクロのコラボ商品も、価格が適正ではなかった、と結論付けて良いものでしょうか。

 

答えはYes であり、Noです。

 

経済学において、モノの価格は「需要と供給の均衡」によって決定されるといいます。

つまり、買いたい人が出せる金額と、売る人が納得できる金額が均衡するところで市場価格が定まるということです。株の取引やオークションなどをイメージしていただけると分かりやすいかと思います。

 

この考え方に基づけば、例えば上記のユニクロの例では「商品が一瞬で売り切れ、高額で転売されている」わけですから、「ユニクロが商品を需要・供給の均衡点よりもずっと安い価格で販売した」という結論が導かれます。

一方コンサートの例でいえば、この考え方で重要なのは「チケットが実際に売れる価格だったかどうか」のただ一点であり、ファンが怒っているかどうかは全く関係がありません。つまりこのニュースから価格の妥当性についての結論は出せないことになります。

 

しかしながら、実際の市場、とくに一次流通の市場においては、モノの値段が必ずしも需給バランスによって決まるわけではありません。

 

マーケティングの理論では、売り手側が商品の値段を決めるときの基本的な考え方は次の2つです。

1)原価から計算する方法

2)市場価格から計算する方法

 

1)は製品や商品を作ったり仕入れたりするのにかかったコストに一定の利益をのせるやり方、2)は既に市場に出回っている同様の商品の値段を参考にするやり方と理解していただければ良いと思います。厳密にはもっと細かい方法があるのですが、基本はこの2つです。

 

では、これをお客さん(買い手)の側から見たときはどうでしょうか。

実はお客さんにとってその商品の価格が妥当か否かという唯一の判断ポイントは、商品を買ったあとに得られる「喜び」の量が、支払った「金額」よりも大きいか否か、です(経済学的には「効用」といいます)。

 

例えば、「カット2万円の美容院」と聞けば殆どの人は「高い!」と感じると思いますが、それが「鏡を見るたびに3か月間毎日幸せな気持ちになれて、周りからはいつもより3割美しく見られるカット」であればどうでしょうか。あるいは「恋人ができる確率が20%上がるカット」でも構いません。

2万円は恐らく割安と感じるのではないでしょうか。

 

この考え方に基づくと、上記の例の見え方が少し変わってきます。

例えばコンサートの例でいえば、お客さんが怒っている大きなポイントは「BTSが出演する時間が分からない」ことだと言われています。

言い換えれば、お客さんの「喜び」の総量は「BTSの出演時間」によって最も左右されるのだから、その時間がわからなければ3万円近いチケットの価格が妥当かどうか判断できない、ということです。

 

実はこのボイコットの争点は「価格の妥当性」ではなく、「情報の対称性」だったわけです。

これは大変納得のいくポイントだと個人的には思います。いかなる商品であれ、販売者はできる限りの情報を売り手に開示すべきだからです。

 

一方ユニクロの例でいえば、ユニクロが多くのお客さんの「喜び」に対して大きく割安な値段設定をしたにも関わらず、そのギャップに目を付けた転売屋がそれを買い占め、「需給が均衡する市場価格」で転売していることに対して怒っている状況です。

 

これに関していえば、「喜び」vs「価格」で判断する個人と違い、転売屋は常に「需給の均衡価格」vs「今の価格」を比較した上で割安なものは全て買い占めるという合理的なプレーヤーです。ユニクロが市場価格より大幅に割安な価格を設定した時点でこの状況は避けられなかったといえます。

また同時に、デザイナーズブランドを通常より安く、高品質で販売するというのはユニクロのブランド戦略にとって非常に重要なポイントです。この状況を意図して作り出したかったかどうかは分かりませんが、これを悪意と取るのは無理があると思います。

 

したがって、少々冷たい言い方になりますが、私はこのニュースにおいて「悪者はいない」=「価格設定の問題はない」と考えます。

 

もちろん、価格の妥当性とは別の議論として、悪意の転売屋の取り締まりをどう強化していくかというの重要なところです。政治家の皆さんには頑張って法整備を進めていって欲しいところですね。

 

いかがだったでしょうか。

 

私たち Mr. & Ms. Cat もいま、THE SHOPの立ち上げに向けて様々な準備を進めているところです。その中で、商品や送料の値段をどうするかについては、本当に毎日頭を悩ませています。

 

もちろん企業である以上利益を上げなければなりませんが、それより何より、価格以上の「喜び」を皆さんにお届けすることが私たちの使命です。お待たせしてしまっており大変申し訳ありませんが、皆さんに納得していただける最良の価格を模索し続けることをお約束します。

 

最後は宣伝になってしまいましたが、THE SHOPのスタートまであと少し、楽しみに待っていてくださいね。

 

それでは!

 

 

 

 

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