BRAND DESIGN | EMILY IN PARIS by NETFLIX
Written by TAN
/ Architect, Creative Director, CEO
October 20, 2020
建築家の山之内淡です。
NETFLIXでとても素敵な作品に巡り合いました。
“EMILY IN PARIS(邦題:エミリー、パリへ行く)” という作品です。
“SATC(Sex and the City)” のクリエイター陣がNETFLIXオリジナルドラマを制作したということで、話題作のひとつといえると思います。
また、最近はNETFLIX内でランキング10位内に入っていますので、みなさんのなかにも既に観たよ!という方も多いかもしれませんね。
“EMILY IN PARIS” で語られるテーマは、現代という時代をコミカル且つ軽やかに、しかしながら非常に鋭く捉えているように感じました。
同時に、私たちの Mr. & Ms. Cat にも深く関係してくるものであるようにも感じられました。
そのため今回の記事では予定を変更し、NETFLIX オリジナルドラマ “EMILY IN PARIS” について書かせていただこうと思います。
* EMILY IN PARIS by NETFLIX, 2020
* https://www.netflix.com/title/81037371
これからの時代に必要な「寛容さ」
自分が “EMILY IN PARIS” を心から素晴らしいと感じたのは、これからの時代に必要な「寛容さ」が描かれている点です。
エミリーのパリの同僚たちは、たしかに嫌味ですし、米国人を見下している様子で上から目線。
加えて陰口を言うのではなく、本人の前でストレートに口に出すため、米国人であるエミリーは自国との勝手の違いに戸惑ってしまいます。
ただ、自分はパリの同僚たちのことをむしろ気持ちの良い人たちであると感じましたし、これからの時代に必要な「寛容さ」をもった人々だなあと感心しました。
そのように感じた理由は、彼らの言葉の「主語」が、常に「1人称(I, my, me)」であるからです。
彼らは常に、「私(I)」はあなたのことが気に入らない、嫌いだ、と言っているのであって、「あなた(You)」はこうすべきだ、こうしなければならない、とは口にしていません。
彼らは、自分が気に入らない相手だからといって、自分が正しいと思うことを、相手に強要することは一切していません。
彼らの主語は、常に「1人称(I, my, me)」であって、決して「2人称(You)」や「3人称(She/He, Her/His, Her/Him)」ではないのです。
こうした「寛容さ」が、心から素晴らしいと感じ、感動した次第です…。
以前の記事で「キャンセル・カルチャー」について取り上げさせていただきましたが…
ここ数年、特にCOVID-19の流行以後は、日本でもSNS上で過剰に第三者を攻撃する雰囲気が色濃くなっていると感じています。
当然ながら、「SNS上で過剰に第三者を攻撃する」理由は、思考の主語が「2人称(You)」や「3人称(She/He, Her/His, Her/Him)」になってしまっているからに他なりません。
あなたは、「こうすべきである」や「こうするのが正しい」といった具合に。
本来ならば主語になって当然の「1人称(I, my, me)」は、一体どこに行ってしまったのでしょう…。
自分の基本的な思考回路は、本作に出てくるエミリーのパリの同僚たちと同じです。
駄目な部分も含めて、自分のことが大好きで、元々あまり他人に興味がある方ではありません。
そのため、関係の浅い第三者の振舞いに対し非難したり怒ったりする人の気持ちが全く理解できませんし、無駄でネガティヴで愚かなエネルギーの使い方であると嫌悪すらしています。
せっかく第三者とコミュニケーションを取るのであれば、褒めたり応援したり、ポジティヴで建設的なエネルギーの使い方をしたいものですし、
少なくとも、本作のパリの同僚たちと同じように、あくまで主語は「1人称(I, my, me)」でありたいものです。
『自分が気に入らない相手だからといって、自分が正しいと思うことを、相手に強要することはしない。』
あくまで主語は「1人称(I, my, me)」で。
それがこれからの時代に必要な「寛容さ」であると強く思います。
映像作品の先端を走る「色」の表現
また、本作 “EMILY IN PARIS” の大きな見所のひとつが、「ファッション」であることは間違いないと思います。
パリの同僚たちの服装も、とっても素敵なのですが…特に、主人公エミリーのファッションは、本当にセンスが良いです。
とりわけ、色の組み合わせが、すごく綺麗で、惚れ惚れします。
Damien Chazelle 監督の “LALALAND” を観た際に強烈に感じたことなのですが、
ここ数年、映像作品のルック(視覚表現)において、色で物語を語るボリュームがどんどん大きくなっていきているように思います。
登場人物のセリフや仕草(脚本と俳優の演技)と同じくらい、色の表現は見落とせないポイントだなあと思います。
その意味で、本作 “EMILY IN PARIS” は、映像作品のトレンドの先端を走っている作品ともいえそうです。
これからの時代に必要な「寛容さ」という現代を鋭く捉えたテーマ。
そして、ファッションによる色の表現。ぜひ注目してご覧ください。
ストーリーもシンプルで、テンポも良いので、普段お忙しい方でも苦なくサラッと観れると思います。
現在、シーズン2を撮影中とのことで…今からとても楽しみですね。
次の記事を読む ⇨