BRAND DESIGN | 韓国発のアイウェアD2Cブランド GENTLE MONSTER

Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

November 15, 2020

 

 

建築家の山之内淡です。

今回は、“GENTLE MONSTER” という、韓国のアイウェアブランドについてご紹介します。


* GENTLE MONSTER, 2011 -

* https://www.gentlemonster.com



“GENTLE MONSTER” というブランドは、2011年に韓国で誕生したアイウェアブランドです。

ひと言でいうと、ものすごくセンスの良い尖った眼鏡ブランドです。


公式website の STORIES 欄を見ると驚きますが…

近未来的スチームパンクな世界観、先端ファッションのコレクション、現代アートのインスタレーション、ミニマルなアートギャラリー、といった数々の要素が組み合わされています。

一見して、「眼鏡屋さん」には見えませんよね。

しかしながら、すでに250億円の売上を上げている、新進気鋭のD2Cブランドのひとつです。




そもそものお話からさせていただくと、ここ数年、本当に韓国のクリエイティビティは凄まじいものがあるなあ…と、感心に次ぐ感心をしていました。


例えば。

ご覧になった方も多いかと思いますが、映画 “パラサイト 半地下の家族” の圧倒的な完成度。



* Parasite, Bong Joon-ho, 2019

* http://www.parasite-mv.jp/



自分はパラサイトを初めて観た際に「これは歴史を変える作品になる」と感じ、その日に3度続けて鑑賞をして、確信しました。

その後、実際に、米アカデミー賞の主要部門を総なめに受賞し、映画史を本当に塗り替えてしまいました。

また最近ですと、これまた皆さんご覧になっている方も多いかと思いますが、“梨泰院クラス” の完成度が圧巻でしたよね。

「素晴らしい」以外の感想が出ないくらい、すきのない大傑作であると思います。



* ITAEWON CLASS, Netflix Originals, 2020

* https://www.netflix.com/search?q=%E6%A2%A8%E6%B3%B0%E9%99%A2&jbv=81193309



今回の記事の本題でもあるのですが、“パラサイト” にしても “梨泰院クラス” にしても、韓国発の優れたコンテンツには、共通した特徴があると自分は考えています。

それは、理詰めによる「要素の掛け算」が徹底された上で、個人の感性をドライブさせていることです。


例えば、“パラサイト” であれば、「韓国の土着文化」「韓国映画らしさ」「現代の社会問題」「誰しも共有できる “家” という普遍性」「無駄のない構造的な脚本」「画としての完成度」「飽きさせないテンポ」「記憶に残る台詞」「記憶に残る風景」といった具合に。


ここ数年における韓国発の優れたコンテンツは、これでもかというくらいに、「要素の掛け算」が徹底されており、その上で、個人の感性に託しての「粘り強い創り込み」が行われています。

この順番を守っていることが、成功の一番のキーなのではないか?と自分は考えています。




今回の記事で取り上げている “GENTLE MONSTER” にも、まさに同じことがいえます。

「近未来的スチームパンクな世界観」が土台にあり、新商品の見せ方は「先端ファッションのコレクション」のように見えますし、商品展示の演出は「現代アートのインスタレーション」のようですし、店舗空間のデザインは「ミニマルなアートギャラリー」のように見えます。

「〜のように見える」が数多く積み上げられているイメージです。


自分は同じクリエイターなので、“GENTLE MONSTER” の創業者が、なぜこのような方向性を取ったのか、自分事として理解できるように思います。

まず、「おもしろいアイウェアブランドがない」と思ったのでしょう。そして、「現代アートのような眼鏡が創りたい・欲しい」と考えたのだと思います。

その上で、上記したような「要素の掛け算」を行い、それに沿って、実際に「粘り強く創り込む」という流れになっていると思います。




ここで重要なのは、「要素の掛け算」→「粘り強く創り込む」の順番であることです。


なぜか?といいますと。

結局は、ブランドの勝敗を決めるのは、「粘り強く創り込む」の部分であるからです。

「要素の掛け算」というのは、所詮は企画書上の言葉に過ぎないので、それに人が感動して購買するということは、100%起こり得ませんよね。


ただ…「粘り強く創り込む」と言葉でいうのは簡単ですが、これは非常に難しいことです。

優れたクリエイターは感情のアップダウンが激しいものですし、長期戦にはそもそもメンタリティが向いていないのが大きいです。

しかし、前提条件として「要素の掛け算」がしっかりと考えられていることで、進むべき方向が明確になるため、何とか長期戦を戦えるようになります。


つまり、「優れたクリエイターは、元々長期戦を戦えるタイプのキャラクターではない」→「優れたクリエイターに、何とか長期戦を戦ってもらえる仕組みにしよう」→「そうすれば “必ず勝てる” はずだ」というロジックなのです。


ハリウッド式と比較するとわかりやすいです。

ハリウッド式の場合、「優れたクリエイターは、元々長期戦を戦えるタイプのキャラクターではない」→「優れたクリエイターがいなくても、そこそこ良いものができる仕組みにしよう」→「そうすれば “まず負けない” はずだ」というロジックになります。


長期的な視点で大きく勝ちにいくのか、短期的な視点で大きな負けを回避するのか、それは自分がどの立場にいるのかで正解が変わると思いますので、相対的なものですよね。

そして、これから勝ち上がっていく必然性がある立場の場合、正解が前者であるのは、100%間違いありません。




このように因数分解して考えていくと、ここ数年、韓国発のコンテンツが非常に素晴らしいものが多く、且つ大ヒットも伴っているのには納得がいきます。


“GENTLE MONSTER” というアイウェアブランド、是非名前を覚えておいてください。

もしご興味がある方は、公式website の STORIES 欄 を覗いてみると、すごくワクワクすると思いますので、おすすめします。

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





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