BRAND DESIGN | 建築家トーマス・ヘザウィック設計の、新たなマギーズ・センター

Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

March 5, 2021

 

 

建築家の山之内淡です。

今回は、Thomas Heatherwick(トーマス・ヘザウィック)という世界的な建築家が設計した、心から素敵な住宅作品をご紹介したいと思います。





 

* Maggie’s Leeds Cetre, Thomas Heatherwick, 2012 - 2020

* http://www.heatherwick.com/project/maggies/

* https://www.archdaily.com/941540/maggies-leeds-centre-heatherwick-studio





本題に入る前に、少しだけ前置きを書かせていただきますね。

 

2021年は、自分にとって「住宅の年」です。

Mr. & Ms. Cat の THE HOUSE の第1号を設計中ですし(今夏着工)、売れっ子の漫画家さんの自邸の新築なども請け負っており…2021年は、住宅ばかりを設計する1年になりそうです。

 

そのため、世界中の住宅作品を、これでもかと言うほど、量を見て研究しています。

現代は本当に便利で、archdailydesignboomdezeenといった優れたメディアがあり、それらは毎日かかさず見続けているだけでも、かなりの情報量になります。

 

自分は、建築家には、「0から空間を発想するセンス」と「色の組み合わせのセンス」が何より重要だと考えていますが…そのような「センス」も、情報量が少ないと、具体的なイメージには繋がりませんよね。





なぜこんなことをわざわざ書いているのかと言いますと。

 

先日、大学で久しぶりに講演をしてきたのですが、学生の方から、「どうしたら建築家として売れることができますか?」というような質問が複数あったからです。

 

本音を言うと…残念ながら、その質問をしている時点で、売れることは不可能だと思います。

なぜなら、「建築家」という職業は、あらゆるクリエイターの中で「最も競争率が高い職業」のひとつなので、「自分が売れないわけがない。なぜなら天才だから。」くらいに自分に自信がないと、そもそもメンタルが持たないからです。

 

ただ…20歳前後の、とても真面目そうな建築学生の子たち相手に、そんな非情な本音を言えるわけもなく…非常に悩んだ答えが、「情報量を増やすこと」でした。

 

つまり、住宅をデザインするのであれば、今自分がまさにそうしているように、毎日毎日世界中の住宅作品に触れ、とことん情報量を増やしてみる。

世界中の建築家の作品を見続けた後で、「自分の方が良いものが創れそうだ」と思えるかどうかを、自分自身に聞いてみる。

 

その答えが、「YES」であれば、きっとあなたは大丈夫。

10年後、ライバルとして会おう。

 

たったひとりでも良いので、学生の方に届いてくれたらなあ…と思います。






さて。

前置きが長くなってしまいましたが、2020年から現在までの期間に発表された住宅作品の中で、最も感動した住宅のひとつをご紹介します。

 

トーマス・ヘザウィックという、世界トップ10に入るような建築家が設計。

イギリスのリードに建築されたマギーズ・センター(Maggie’s Leeds Centre)です。

 

マギーズ・センターについては、以前の記事で、スティーブン・ホール設計のマギーズ・センターをご紹介しました。

今回は、同じマギーズ・センターでも、トーマス・ヘザウィック版というわけですね。

 

写真を見るのが早い建築ですので、ざっと見てみてください。








 

* Maggie’s Leeds Cetre, Thomas Heatherwick, 2012 - 2020

* http://www.heatherwick.com/project/maggies/

* https://www.archdaily.com/941540/maggies-leeds-centre-heatherwick-studio





まるでキノコのようなかたちの建築ですよね。

 

どこまでが内部で、どこからが外部なのか、木造らしいのは何となくわかるけれども、どういう構造になっているのか…

自分もきちんと確認するまで判然としませんでした。

 

この建築、複雑に見えるのですが、そこまで複雑なわけではなく、広い敷地に配置された四角柱の壁に、木の梁が張り付いており、木の梁が内外を貫いて重なる構造になっています。





 

 

 

 

自分がとても感動したポイントは、この「そこまで複雑なわけではない」点です。

木材を3Dに曲げて、キノコのようなフォルムをデザインしているのであれば、建設現場はとても大変でしょうけれど、特に驚きはなく、そこまで感動もしなかったであろうと思います。

 

ただ、このトーマス・ヘザウィック設計のマギーズ・センターは、一見とても複雑そうに見えるが、実はそこまで複雑な構造体で構成されているわけではないため、

個人の住宅レベルであっても、お金持ちのオーナーであれば十分実現可能な設計に見えます。

 

その点が、心から素晴らしいと感じます。






これからの時代に、建築家が創るべき建築は、「特別な機会を活かした、特別な作品」よりも、「特別な機会を活かした、普遍的な作品」ではないかと常々考えていたので…

個人的に、とてもとても勇気をもらった一作でした。

 

建築家トーマス・ヘザウィック自身については、そのうちしっかりとまとめて記事を書き、みなさまにご紹介できればと思っています。

 

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





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