BRAND VIEW | 英語の共通テストに込められたメッセージ

Written by YUKI

/ CFO

 

January 25, 2021

 

 

皆さんこんにちは。

 

そろそろ1月も終わりだな〜なんて大人が呑気にしている中、先週は大学受験生にとって非常に重要な試験<共通テスト>が実施されました。

 

今年はこれまでのセンター試験から問題形式が一新されたということで、私も少し注目をしていました。

 

大学入試に合格するために多くの時間を費やす受験生たちにとって「どんな問題が出題されるか」というのはまさにその勉強内容や方法を規定する前提条件。

 

言い換えればこの試験の内容こそが、日本の学生たちに「どんな勉強をして欲しいか」という国からの願いに他ならないからです。

 

一通り試験内容を見てみたのですが、とりわけ英語の試験には驚くほどの内容の変更がありました。

 

今回は共通テストの英語の試験形式の変更点をみながら、これから日本の英語教育がどのように変わっていくのか、少し予想をしてみたいと思います。



 

何が新しくなったのか

 

こちらが、実際に出題された共通テストの試験問題です。

https://mainichi.jp/exam/kyotsu-2021/q/?sub=LEN

 

細かな変更はたくさんあるのだと思いますが、受験生にとって最も重要な変更は以下の2つかと思います。

  • リスニングの配点が高くなった
  • 問題文も含めて英文で設問が作られている

今までのセンター試験では Reading が200点、Listening が50点と、Readingに実に4倍もの比重が置かれていましたが、共通テストではReadingとListeningが全く同じ得点配分になりました。

これは受験生にとってはまさしく地殻変動とも言える変更で、Listeningの訓練を受けてこなかった殆どの人にとっては試験が大幅に難化したと感じる要因になったようです。

 

また、試験問題が英語で書かれているというのも、重要な変更点の一つです。

これは恐らく試験の難易度そのものには大したインパクトがないのですが、英語を読み慣れてない受験生にとっては「とっつき辛い」と感じる要因になっているのではないかと思います。



 

試験に込められた願い

 

受験生や先生たちから多くの批判や戸惑いの声が上がった上記の変更点ですが、試験問題の良し悪しというのは正答率や受験者の満足度によって測られるべきものではなく、目的に沿って評価されるべきものです。

 

この新たな試験形式に込められた目的=願いは、実に明確なものです。

 

それは「実際に英語でコミュニケーションが取れる人を育てたい」というこの国の切なる願いです。

 

そして私は、今回の試験形式の変更はこの願いを長期的に叶えるために、大変意義のある変更だったのではないかと考えています。

 

今までのセンター試験は、はっきり言って受験生が「英語ができない日本人」であることを前提にした試験だったと言えます。

 

英語を発音した際のアクセントがどこに置かれるかを記号で答えたり、複数の単語を並び替えて文章を作ったりと、およそ実際のコミュニケーションを想定していない問題が全て日本語で出題されていました。

 

いわば、英語ネイティブであっても、日本語ができなければ点数が取れない試験だったわけです。

 

ところが今回の共通テストの問題では、そのような「日本語のニュアンス」が殆ど排除され、英語で教育を受けてきた人であれば問題なく満点が取れるような試験でした。

 

TOEICやTOEFL、IELTSのような、実際に国際的に広く使用されている英語試験の規格に大きく近づいた、と言ってもいいかもしれません。

 

実際に英語を使ったコミュニケーションができる人を育てること英語教育の目的だとするならば、生徒が早い段階からこの共通テストで点数が取れるように勉強することは、非常に意義のあることだと私は考えます。



 

これからの英語教育

 

ここからは私の予想ですが、率直に言ってしばらく日本の英語教育は苦しみの時期に入ると考えています。

 

なぜなら、英語を教えている学校の先生たちの殆どが「英語のコミュニケーション」の訓練を受けてきていないため、子供たちがどうやってこれほどの量のリスニングや会話の問題を処理すればいいのか教えることが困難なためです。

 

日本語の音と英語の音は根本的に異なるため、通常中学生以上の日本人が一定以上のリスニング力を身につけようとする場合、大量の英文を短時間のうちに読む訓練や、実際のお手本に沿って英文をシャドウイングする訓練、実際に外国の方々と英語を使ってコミュニケーションを取る経験などが必要になってきます。

 

ところが残念ながら日本の英語の先生の殆どにそのような経験はありませんし、普段の仕事の忙しさから、今からその訓練をすることは非常に困難と言わざるを得ません。学校では教科書や過去問の内容について教えつつ、実際の訓練は子供たちの独学に委ねるという状態が続くはずです。

 

したがって、子供たちはこの試験に立ち向かうため英語のレッスンに通ったり、塾に通ったり、自分で参考書を見つけて訓練するなど、しばらく試行錯誤をしなければならないでしょう。

 

しかし今から5〜10年後、日本の英語教育は今より格段に実践的なものに変わるはずです。

 

なぜなら、この試験をクリアした学生たちが大学を卒業し、徐々に学校で教える立場へと変わっていくからです。彼らの行う授業は、当然センター試験しか経験がしたことがない先生たちのものよりも、実際の英語のコミュニケーション訓練に焦点が当てられたものになるでしょう。

 

また、当然リスニング能力は小さい頃の方が身に付きやすいため、児童向けの英語教室がこれから大いに流行すると予想します。

 

安価な価格で英会話ができるオンライン教室などの需要もより大きなものになるはずですから、中・長期的には子供たちの英語力は大幅に底上げされていくのではないかと考えています。

 

東大生のようなエリートでさえ英語を話せない学生が殆どという、日本にとって鬼門とも言える英語教育。

 

この共通テストの試験形式には、この現状をなんとか打破したいという国の願いが詰まっています。

 

まがいなりに英語で10年近く仕事をし、大いに苦しんできた1人の人間として、その願いが成就されることを願ってやみません。

 

それでは!

 

 

 

 

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