BRAND DESIGN | 人生に大きな影響を与えてくれた作品たち(4)クロノ・トリガーとサピエンス全史(後篇)

 Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

September 20, 2020

 

 

築家の山之内淡です。

今回の(後篇)では、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏著 “サピエンス全史” について、概要をまとめてご紹介をしつつ、

(前篇)の最後に書かせていただいた「なぜ、私たちは、こんなにも『物語』に魅せられ、影響を受けるのだろうか?」という結論に向かって論を進めていきます。

そこで得られる結論は、猫をはじめとした人類以外の存在と生きる、現在の私たちにもつながっていくものと思います。

 

“サピエンス全史” については、本作そのものを聞いたことがなかったり、存在は知っていてもこれまで読んだことのない方にも、なるべくわかりやすいように書きたいと思います。

それでは早速、はじめていきましょう。




“サピエンス全史” とは、イスラエルの歴史学者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏(以下、ハラリ氏)によって書かれた「現代を生きる私たち人類(ホモ・サピエンス種)に関しての歴史書」です。

 

とりわけ、私たちの頭の中にある、背中の丸いお猿さんに近い種から順に、背筋が伸びて火や道具を扱う現在の私たちに近い姿へと、「人類は進化してきた」という常識を、大きく覆す考え方が提示され、世界中で大ベストセラーとなりました。



まず、ハラリ氏が私たちに示した衝撃的な事実は、現在の私たち(ホモ・サピエンス種)と同時期に、他に複数の人類種が存在していた、とするものです。

現在の私たちのように、火や道具を扱える人類種に直線的に(リニアに)進化してきたのではなく、私たち(ホモ・サピエンス種)が、大勢の他の人類種を攻撃し、絶滅させたというのです。

私たち(ホモ・サピエンス種)が、他の人類種を絶滅させた結果として、地球上で唯一の人類種が私たち(ホモ・サピエンス種)になり、現在に至るというのです…。



“サピエンス全史” は、1ページ1ページが非常にスリリングで、発見的刺激に満ちています。

ハラリ氏は、更に衝撃的な事実を私たちに示します。

 

それは、私たち(ホモ・サピエンス種)が、他の人類種と比較して、とりわけて運動能力が高かったわけではなく、知能が高かったわけでもなければ、火や道具を上手に使えたわけでもない、という事実です。

私たち(ホモ・サピエンス種)が能力的に優れていたから、生き残ったわけではないのです。

 

ハラリ氏は、続けます。

 

私たち(ホモ・サピエンス種)には、他の人類種が持っていないユニークさが、2つあったといいます。

1つは、「他の人類種の臭いを嫌い、他の人類種に対して非常に攻撃性が高かった」こと。

そのために、私たち(ホモ・サピエンス種)は、他の人類種に対して執拗に攻撃を仕掛け、絶滅に至らしめてしまったというのです…。

 

2つめのユニークさは、今回の記事の核心にあたる内容です。

私たち(ホモ・サピエンス種)だけが「虚構(フィクション)を信じることができた」というのです。

 

「虚構(フィクション)を信じることができた」が故に、「動物としては他に例がないほどの数での、”集団行動が可能” になった」といいます。

これは一体、どういう意味なのでしょうか?



ここでひとつ、身近な具体例で考えてみます。

例えば、サッカーのワールドカップ。私たちの多くは自国の日本代表を、もしくはご家族やご友人に縁のある国の代表を応援すると思います。

 

この例からいえるのは、私たちが「”国” という、虚構(フィクション)を信じている」という事実です。

「”国” という、虚構(フィクション)を信じている」からこそ、日本代表のユニフォームを着てプレイするサッカー選手に対して、自分と同じ国民なので近しい存在であるから応援したい、という感情が生まれるのです。

 

こうした抽象的な概念を共有することによって生まれる、仲間意識や同族意識こそが、私たち(ホモ・サピエンス種)が持っていて、他の人類種は持っていなかった、とても珍しいユニークさなのです。

 

私たちとは別の、他の人類種は、自分の血縁など限られた個体にしか、仲間意識や同族意識を持つことができませんでした。

結果として、私たち(ホモ・サピエンス種)が仕掛けた ”種全体が統率された攻撃(=戦争)” に対して、あまりに無防備であり、抗う術を持たなかったのです…。




さて、ここで話を元に戻します。

「なぜ、私たちは、こんなにも『物語』に魅せられ、影響を受けるのだろうか?」

 

その答えは、非常にシンプルです。

「虚構(フィクション)を信じることができること」こそが、私たち(ホモ・サピエンス種)の特別な才能だから。

物語に魅せられることこそが、私たちが私たちである、確たる理由だから、です。




ここで話が終わってしまうと、「へーそうなんだ」と雑学のひとつで終わってしまうと思いますので…ここからもう一歩、論を進めてみます。

 

現代に生きる私たちにとって、大切な、大切にするべき ”虚構(フィクション)” とは、一体何なのでしょうか?

 

“サピエンス全史” によれば、「仲間意識などを形成する上で、中心になる得る抽象概念が、= ”虚構(フィクション)” である」と定義できそうです。



もう少し、具体的に、身近な内容から掘り下げてみましょう。

「私たちと、愛猫との間にあるものとは、一体何なのか?」

 

自分は、それこそが ”住” である、と考えています。



“衣・食・住” とよくいわれますが、 ”衣” と ”食” は、極めて具体的です。

比較して、 ”住” は非常に抽象的な概念であると思います。

 

”住” という概念のなかには、物理的な空間は当然ながら、ライフスタイルへの考え方や、日々の暮らし方・働き方・家族のあり方、そして猫をはじめとした人間以外の存在と時間を共にすることも含め、非常に様々なイメージが含まれていると思います。



これまで何度も書かせていただいたように、自分は早くから建築家になろうと決めていて、だからこそ「どのような建築家になるべきなのか?」と考え続けながら大人になりました。

 

Mr. & Ms. Cat というブランドを、建築家である自分が創る意味はあるのか?あるとすればそれは何か?

自分は、建築に向き合うと100年という寿命はあまりに短いと考えていますので、確信がなければブランドを創ることに時間を割く選択肢は取らなかったと思います。

自分には、確信があります。

 

それは、「”住” こそが、現代に生きる私たちにとって、最も大切にするべき『物語』である」ということへの確信です。

 

この記事を読んでくださっている皆さんと同じように、自分も自分の愛猫のことが、愛おしくて仕方ありません。

 

「私たちと、愛猫との間にあるものとは、一体何なのか?」

その答えは、「”住” という物語である」と強く思っています。




様々なところでいわれていることではありますが、今後、Robotics が加速度的に発展していき、多くの国の人々は、「余暇」にほとんどの時間を割くことになるでしょう。

言い換えれば、それは「『物語』を味わうことに、ほとんどの時間を割くようになる」ともいえます。

 

COVID-19 によって、私たちの生活スタイルは、大きな変化を余儀なくされました。

業態・業種によるとはいえ、Work from Home が一般化し、Netflix をはじめとしたホームエンタテインメントが大きく躍進し、私たちの Mr. & Ms. Cat を含むECサービスもますます身近になってきました。

 

私たちの “住” は、今後ますます多様に、且つ複層的になっていくことはもはや疑いようがないと思います。

しかし「愛猫との暮らし」という、とても具体的で、手触り感のある “住” を豊かにしていくことで、大きな変化が断続的に起こっていくであろうこれからの時代においても、気楽に楽しく暮らしていけるのでは?と思っています。




小学生の頃、心から感動したRPG “クロノ・トリガー” に出会えたおかげで、

本当に多くのことを学び、その後、“サピエンス全史” に出会うまでの20年以上、「物語」について考えを深め続けることができました。

 

自分のようなモノづくりの人間に限らず、私たち人類(ホモ・サピエンス種)は、「物語」を体験すること、味わうこと、より豊かにすることによって、前に進むことができるのだと思います。

 

Mr. & Ms. Cat も、そんな「物語」の一部になれたら…と願っています。





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