BRAND DESIGN | 映画『メッセージ(原題:Arrival)』について

Written by TAN

/ Architect, Creative Director, CEO

 

February 21, 2021

 

 

建築家の山之内淡です。

歴史を通じて、多くの人が「建築家と、映画監督は、似ている」と話っており、実際のところ、

“建築” にとっての “建築家” と、“映画” にとっての “映画監督” が果たす役割は、非常によく似ています。

なぜかというと、“建築” も “映画” も、総合芸術であるからで、多くの職能・技術を結集してのモノづくりが、建築と映画の特徴です。

 

自分も、昔から映画が本当に大好きです。

今でも、気に入った映画は、何度も何度も映画館に足を運んで鑑賞しています。

* ちなみに、Mr. & Ms. Cat の CFOを務めてもらっているYukiとは、映画の話をする友達で、映画という共通体験がなかったら、出会っていたかどうかすらわかりません。

 

そんなこんなで、映画に対しては、とても思い入れがあります。

今回は、心から大好きな映画を一本、ご紹介したいと思います。

 

 

 



映画『メッセージ(原題:Arrival)』

 

 

 

みなさんは、映画『メッセージ(原題:Arrival)』をご存知でしょうか?



 

* Arrival, Sony Pictures, 2017

https://www.sonypictures.jp/he/1289466

 



原作は、世界的な小説家テッド・チャンによる短編小説『あなたの人生の物語(原題:Story of Your Life)』です。

 

高度なSF映画ではあるのですが、社会に対しての普遍的なメッセージを持っている作品で、エンターテインメントやヒューマンドラマの側面からも圧倒的な完成度の作品です。

そして、画の美しさや、細部に至るまでのアートワーク・デザインの美しさ、音響の美しさも素晴らしく…

観ていてワクワクが続いて飽きない、ハリウッド商業SF映画でありつつも、高い作品性を両立している、稀有な映画といえると思います。




以下、あらすじを書いていきます。

 

読んでから観ると、より映画を楽しめるように書いているつもりですが…何もストーリーを知りたくないよ、という方は、鑑賞後に戻ってきていただければ幸いです。

 





 

世界各地(世界で計12箇所。日本も含まれており、場所は自分の故郷でもある北海道)に謎の宇宙船が現れるところから、物語は始まります。

主人公は、著名な言語学者のルイーズ・バンクス博士という女性です。

ルイーズ博士は、米国軍の依頼を受け、調査を開始します。





幻想的な形状の宇宙船の中にいたのは、「ヘプタ(7本足という意味)ポッド(殻という意味)」と名付けられた、2体の地球外生命体でした。

ヘプタポッド達は、空中に浮遊しており、ルイーズ博士からの問いかけに対し、墨汁で円を描いたような不思議な文字で応答します。そこから、博士達とヘプタポッド達との対話が始まります。

 

 

 

 

それと並行し、ルイーズ博士は、愛らしい少女と、なぜかその少女の母としての自分が登場する光景を、何度もフラッシュバックするようになります。

過去の記憶の風景のように、具体的でとても鮮明な映像なのですが、博士は独身で、娘を持ったことがありません。

更に不思議なことに、少女の父親は不在であり、「ルイーズ博士のある言葉が原因で去ってしまった」らしいのです…。

 

 

 

 

ヘプタポッド達との対話が進んでいく中、その姿を捉えた画像がリークされてしまい、世界各地で炎上が発生します。

連鎖的に、暴動が頻発するなど、世界中に混乱が伝播していきます。

混乱が拡大していく中、とある出来事がきっかけで、人類の生命線であった国際間の協力体制すらも、崩壊してしまいます。

そして、とうとう、中国の軍隊が武力行使を行うことを決定してしまいます…。

 

米国内でも、ヘプタポッド達への不安から、彼らの宇宙船に独断で攻撃を仕掛け、ヘプタポッドの1体を殺める兵士が現れるなど、事態はますます悪化の一途を辿ります。

 

 

 

 

そんな中、ルイーズ博士は、ヘプタポッド達から、ある真実を教わります。

それは、ヘプタポッド達の扱う文字言語を理解することによって、「時間」の概念が変わる、という不思議な体験でした。

ヘプタポッド達にとって、「時間」は、過去も未来も等価にそこにあるもの(非線形の存在)であり、人間のように、時間を過去から未来に流れるもの(線形の存在)として認識する生物ではなかったのです。

同時に、ヘプタポッド達が、地球に飛来した目的についても、語られていきます。

 

 



開戦が間近に迫る大混乱のなかで、ルイーズ博士は、「未来の自分の記憶」を頼りに、とある中国の最重要人物に、電話を掛けることになります。

その一本の電話がきっかけとなり、何と、中国は宣戦布告を撤回。

一転して、国際間の協力体制も復旧していきます。





そして最後は…フラッシュバックしていた、未来の少女の秘密が明らかになり、その運命との向き合い方を、ルイーズ博士が決断するところで、物語は静かに幕を閉じます。

 

 

 



徹底的な科学考証を経た細部のデザイン

 

 

 

自分が、映画『メッセージ(原題:Arrival)』を好きなポイントは、前述したとおりにたくさんありますが…

徹底的な科学考証を基につくられたデザインに、特に惹かれます。

 

例えば、ヘプタポッド達の扱う文字言語は、習字を基にデザインされています。





そして、それを解読するアプローチについても、「実際に、地球外の未知の言語に科学的アプローチを行うとしたら、科学者たちはこのような手法を取る」というデザインを、綿密に設計した上で、映像化しています。





科学考証の監修者は、理論物理学者のStephen Wolfram(スティーブン・ウルフラム)博士です。

日頃から、「SF映画は、もっときちんと科学考証すべきだ。そこに予算をかけろ!」と声高に発信していた方だそうで、何と、その発言が実ってしまったかたちですね。笑

 

そういったキャスティング法にも、今の時代らしい柔軟な姿勢が垣間見られますし、多方向から、とても共感がもてる作品です。

まだまだ大好きな映画はたくさんありますので、機会があればまたご紹介させていただきます!



まだの方は、本当に素晴らしい作品ですので、Netflixなどでぜひぜひご覧ください。

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





次の記事を読む ⇨

BRAND STORY | Column: わたしの好きな、猫との時間 vol.7

BRAND DESIGN | 映画『メッセージ(原題:Arrival)』について